2023年 5月16日 第1週【 社会福祉原論 】:講師 今井 伸 氏
*社会福祉(保障)の歴史(イギリスを中心に)
貧困からの救済:
Q:貧困は、個人の道徳的堕落・責任によるのか?
『劣等処遇の原則』:救済を受ける対象者は、最下級労働者の生活水準より
悪いものでなければならない、という原則。(新救貧法 1834)
→すべては自己責任。沈みかけた船の座席争い、弱者が弱者の足を引っ張
りあう、現代の貧困問題に見られる思考の基底にもあるのではないか…。
『働かざる者喰うべからず』→働くことができないのには、やむにやまれぬ
理由があるはず。 例えば、母子家庭の貧困率を例として考えてみる。
A:貧困の原因は……
不規則、低賃金など雇用の問題、疾病、多子(英:ブース)、人生の過程
で遭遇する「窮乏・失業・無知・不潔・怠惰」などのあらゆる社会的事故
(英:べヴァリッジ)、いわば、個人と社会との関係性・軋轢に因ること
が大きく、一概に個人の責めに因るものとは言えない。
(*ケースワークの母 米:メアリ・リッチモンド『社会診断論』)
*社会福祉とは何か
権利としての「社会福祉」、義務としての「社会保障」
人として幸福に暮らす権利、社会が果たすべき責務としての保障
~ 憲法第11条(基本的人権)13条(幸福追求権)25条(生存権と国家責任)
「福」も「祉」も共に幸福や幸せを意味する語で、英語の welfare も well + fare 「よ
りよく生きる」を意味する。*farewell となると「別れ」を意味するのは興味深い…。
*社会保障制度
社会保障制度とは、「疾病、負傷、分娩、廃疾、死亡、老齢、失業、多子、その他困窮の
原因に対し、保険的方法又は直接公の負担において経済保障の途を講じ、生活困窮に陥っ
た者に対しては、国家扶助によって最低限度の生活を保障するとともに、公衆衛生及び社
会福祉の向上を図り、もって全ての国民が文化的社会の成員たるに値する生活を営むこと
ができるようにすること」と定義。(1950年 社会保障審議会勧告)
≪社会保障の四大柱≫
① 社会保険:年金保険 医療保険 介護保険 雇用保険 労災補償保険
② 公的扶助:生活保護
③ 社会福祉:いわゆる福祉サービス全般
④ 公衆衛生:感染症予防 上下水道整備 等
*重層的支援体制整備事業
厚生労働省(https://www.mhlw.go.jp/kyouseisyakaiportal/jigyou/)
社会福祉法改正により創設された事業(法106条の4)で、2021年4月より実施。
「新たな時代に対応した福祉の提供」
※地域住民の参画と協働により、誰もが支え合う共生社会の実現
・包括的相談支援事業
・支援が必要であるにも拘わらず届いていない人に対し、行政や支援機関などが
積極的に働きかけて情報・支援を届けるアウトリーチ等を通じた継続的支援事業
※支援を必要とする人たちを、行政等の支援機関へつなぐためには、地域住民の気づき・
発見機能が必要不可欠。では、どうすればその機能が働くようになるのか…。
【講義を通じての振返り】
※景気低迷、労働力不足、人口減少、超高齢社会…日本が抱える課題、その現状を考えるとき、社会保障制度の財とサービスの低下を危惧せざるを得ない。やがては一層の自助を求められ、共助・公助は最低限度、いわゆる夜警国家のような姿を予想しなければならないのだろうか。自助、互助は果たしてどこまで機能し得るのか。国が進める「地域住民参画と協働により、誰もが支え合う共生社会の実現」はどうすれば可能か。行政書士として、重層的支援体制の構築にどのように関わっていけるのかを考える機会としたい…。
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